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転居して空室になる。賃貸か?売却か?

「賃貸が良いでしょうか?それとも売却が良いでしょうか?」

弊社だけでなく、不動産に関わる仕事をしているとよく受ける相談だと思います。

本件は、ちょうど70歳になられる女性からのご相談でした。窓口はその方のお嬢様。

 

長年住み慣れたマンションでしたが、お嬢様夫婦のご自宅近くへの転居をお考えでした。

転居先は借り住まいになるので、自宅を貸した賃料で借りる部屋の家賃を支払うと良いか?

ただ、自宅マンションはもうすぐ築40年になろうとしている・・

賃貸中にどこかが故障したりして、補修費がかかることも予想される・・

であれば、いっそのこと売却してしまった方が良いだろうか・・?

という感じで悩まれていました。

 

そこで、ご自宅を賃貸に出した場合の試算をしました。

まず、親しい賃貸業者(リフォーム業も兼業)に依頼し、賃貸可能となる最低限のリフォーム費用の見積り、そして賃貸可能な賃料査定を出してもらいました。

ご自宅はとても奇麗にお使いでしたが、30年以上何も手を加えていないお部屋でしたので、

賃貸可能な最低限のリフォームとして見積もっても、250万円はかかることがわかりました。

賃料としてはリフォーム直後で11~12万円、この先10年の平均賃料は11万円という査定でした。

 

一方、このマンションの毎月の管理費+修繕積立金は36,100円 

そして、固定資産税・都市計画税は86,400円/年でしたので、

マンションの保有コストは、月当り43,300円になります。

 

月110,000円の家賃から保有コスト43,300円を引きますと実質月収は66,700円です。

リフォーム代250万円をこの実質月収で割り算しますと、37.48・・という数字が出ます。

賃貸可能にするための250万円のリフォーム代は、家賃11万円で賃貸したとして、

全額を回収するのに37か月・・、丸3年はかかることになります。

 

それでも250万円のリフォーム代を手持資金で支払ってしまえば、実質収入66,700円で

転居先の家賃を支払うことができるかもしれません。

このあたりはご本人とご親族の価値観により決まるところです。

決して恣意的なアドバイスをしてはいけないところです。

 

また、賃貸借には普通賃貸借と定期借家の2種類があることもお伝えしました。

一般的に、マンションは空室の方が高く売却できます。

定期借家契約で賃貸し、期間満了時にもう一度売却か賃貸かを選択することもできます。

ただ、定期借家契約の場合は、普通賃貸借(前記11万の家賃)より家賃が下がります。

 

普通賃貸借の場合、売却したいと思ったときに賃貸借契約が解約できない場合、

年間実質賃料80万円(66,700円×12か月)を期待利回り6%で除しますと、

収益不動産としての売却可能価格として1333万円が算出されますが、

空室であれば10年後でも1700万円前後で売却できるという予測もありました。

 

最終的に、賃貸することのメリットよりはリスクの方が大きいとご判断され、

ご売却の方向へと舵を切られました。

 

【後日談】

本ブログの売主さんですが、売却完了した日のジャスト1年後に「1年前の今日は・・」というお礼のご連絡をいただきました。

コンサルティング(仲介を含む)する身としては、どんなに真剣に考えて対応した仕事だったとしても、頭のどこかで「これで良かったのだろうか?」 と思うものです。

時間がたってからのご連絡は、コンサルティング業を営む人間にとってはとても嬉しいものです。