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収益物件 低利回り物件の価格下落リスク

収益不動産(オーナーチェンジ物件)の購入目的は人それぞれだと思います

長く低金利の時代が続いているので、運用利回りが目的であったり

将来のキャピタルゲインが目的であったり

子や孫への上手な資産の継承、相続対策が目的であったりします

 

相続対策を目的とした収益不動産の購入については、相続時精算課税を利用すると、

贈与税を相続発生時まで繰り延べつつ、不動産から生まれる収益が子や孫に入ります。

そのあたりはまた別の機会に書こうと思います。

本ブログでは、「低利回り物件のリスク」について書きます。

 

昨今の収益不動産は低利回りが当たり前の感じになっています

経費を引かない年間収入を価格で除した「単純利回り」「表面利回り」でも

4%台などは当たり前で、3%台も何ら珍しくありません

「金融機関に現金を預けるよりはよっぽど良い利回りだから」

と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、不動産の場合は「元本が変動」します

このあたり、しっかりと理解されている方が多いとは思いますが、

念のため、再確認しておきましょう

まず、「利回物件」とも呼ばれる収益不動産ですが、その時代の期待利回りがあります。

平成初期のバブル時においては、建物が新築に近い状態で、都心一等地という立地でしたら、

利回り1%台でも売れましたし、2%~3%という表面利回りも普通に売買されていました。

そしてバブルがはじけ、収益不動産の利回りはいったん7~10%程度まで上がりました。

そして、昨今の都心での利回り3~6%という状況になっています。

 

収益不動産は、(土地の価格)+(建物の価格) という計算式で不動産の価格が決まるというよりは、

「年間収入」÷「期待利回り」で価格が決まるものです。

 

「港区で新築のビルだったら3%回っていれば売れますねぇ」

と言われるように、利回りが価格を決めてしまう傾向が強いのです。

従いまして、年間1200万円の賃料収入が得られる不動産であれば、

1200万円÷3%=4億円 という売却価格が算出されるわけです。

 

そこで大事なのは、この4億円の収益不動産を購入したとして、

この先の将来、収益不動産に期待される利回りが3%のままかどうか?

というところを留意していただくことです。

 

新築の収益不動産なので購入した時は利回り3%が相場だったかもしれませんが、

例えば、3年先に、同エリアの新築の収益不動産の期待利回りが3.5%となり、

築3年経過したこの収益不動産の場合、期待利回りは4.0%になるかもしれません。

3%⇒4%への期待利回りの変化、たった1%と思われるかもしれませんが、

低利回りの収益不動産の場合、1%の利回りの差は、価格に大きく影響します。

 

もし3年後に期待利回りが4%になっていたとすると、購入した不動産の価格は

1200万円÷4%=3億円 ということになります。

 

せっかく3年間で1200万円×3年=3600万円の収入を得られたとしても、

何らかの事情で、もし3年後に売却することになった場合、売却損が1億ですから、

単純な差し引き計算で6400万円もの損失が出てしまいます。

これでは収益不動産を購入した意味がありません。

 

都心から少し離れた場所だったり、ある程度築年数が経過した建物だったりで、

期待利回りが7%となる収益不動産を4億で買ったとします。

勿論、建物の築年数によっては、今後の補修費がかさむという問題はありますが、

前例と同様、3年後に期待利回りが1%変動したときの価格変動を試算します

 

年間賃料は2800万円ですから、期待利回りが8%になると価格は3億5000万円になります。

ここで5000万円の売却損が発生することになりますが、3年間の賃料収入は・・

2800万×3年=8400万円 です。

つまり売却損5000万円を補うほどの賃料収入があるのです。

 

収益不動産の価格は、その年その年で求められる「期待利回り」で決まります。

そして、期待利回りが1%変動した場合、低利回り物件ほど価格が大きく変動します。

もちろん逆に大きく価格が上昇することがないとはいえません

そのあたりを十分に理解したうえで収益不動産の購入をお考えいただければ幸いです

 

本ブログは、「低利回りの収益不動産はリスキーだから買わないように!」と申し上げるものではありません。

低利回りの物件は、立地も良く、建物も新しく、土地+建物の「積算価格」が高い物件が多いです。

ただ、自己使用の不動産を買う場合とは異なり、収益不動産は「今後得られる賃貸収入」と「将来、売却した場合の価格」、少なくともこの2点は常に念頭に入れ、購入物件を選んでいただければと思います。

 

【余談】

例えば一戸建やファミリータイプの区分所有マンションで、空室状態なら5000万円で売却可能な物件であるが、賃借人に年間家賃120万円で貸しているので、4000万円(利回り3%)で売り出されている物件があったとします。

このような物件は、賃借人が自ら解約して退去すると、4000万円から5000万円へ価値が上がります。