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要注意! 3000万円特別控除

2種類ある 3000万円特別控除

現在、不動産譲渡税に関する「3000万円の特別控除」は2種類あります。

1つは「居住用3000万円特別控除」もう1つは「空き家3000万円特別控除」です。

 

「居住用3000万円特別控除」

国税庁のHPでは、

『居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除の特例』

という表現になっています。

 

「空き家3000万円特別控除」

国税庁のHPでは、

『被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例』

という表現になっています。

 

「居住用3000万円特別控除」は昔から存在する特例で、基本、日本の税制は、「居住用」に関する課税に対しては優しい税制が構築されています。

 

対して「空き家3000万円特別控除」は、平成28年4月1日から令和5年12月31日までに、被相続人の居住用財産(空き家)を売却した場合にだけ適用される時限立法です。

日本全国いたるところで空き家が多くなり、空き家の崩壊による危険性や、空き家が犯罪に利用される危険性などを考慮し、日本全国の古い空き家を減らしていこう!という国の方針により設立された税法です。

令和4年12月の税制改正大綱により、この特別控除は、令和9年12月31日まで延長される見込みです。

居住用3000万円特別控除の注意点

居住用3000万円特別控除の適用要件は、正しく国税庁HPの通りですが、国税庁のHPだけで判断できるケースばかりではないのと、意外と見落としがちな点もあるので、私の過去30年超の不動産仲介・コンサルの経験上、注意する点をいくつか書き留めておきます。

※毎度のことですが、必ず税理士等に最終確認してくださいねっ

 

1.必ず建物を所有していること

例えば夫婦で住んでいる戸建の場合で、土地の所有名義が夫と妻、建物の所有名義が夫のみの場合、居住用3000万円特別控除が適用できるのは夫だけで、妻は適用されません。

 

そもそもこの3000万円特別控除は、「住んでいた家」を売却する時の税金を軽くする税法なので、売却した物件が土地だけではダメで、必ず「家」を売却しなければなりません。

 

「いやいや、妻も私と一緒に30年間、この家に住んでいましたよ!」

と言いたいところですが、譲渡税は「何かを売却した時の税金」なので、「家屋」を売却していない人に対しては居住用3000万円特別控除は適用されません。

 

もう一つの例・・

もともと奥様の実家を奥様が相続したので「土地の所有権は100%奥様」

その奥様名義の土地上に建っている家は、夫が住宅ローンで建てたので「家の所有権は100%夫」

土地は昔から所有しているので、土地の譲渡益はかなり大きな額になります。

でも、奥様が建物を所有していないので、居住用3000万円特別控除は利用できません。

 

このような夫婦の場合、「配偶者2000万円贈与の特例」を利用すると良いと思います。

国税庁HPでは、

『夫婦の間で居住用の不動産を贈与した時の配偶者控除』

という表現になっています。

婚姻期間20年超で配偶者に贈与した場合、110万円基礎控除のほかに2000万円まで控除される特例です。

これにより、前記夫婦の場合、土地と建物をそれぞれ相手に贈与して、夫婦ともに土地・建物を所有することで、夫婦どちらも居住用3000万円控除が適用できるようになります。

ただし、売却する直前での贈与は、税務署から「居住用3000万円控除の特例を利用するための贈与」と指摘されて否認される恐れがないとは言えないので、贈与するタイミングには要注意です。

 

2.住まなくなってから3年以内、建物解体した場合は1年以内、の譲渡であること

「5年前まで住んでいた自宅を売却したのだが・・」

というような場合、居住用3000万円特別控除は適用されません。

 

正確には国税庁HPに記載があるように、

「住まなくなった日から3年を経過する日の属する12月31日までに売却する」が適用条件です。

2023年2月1日に転居した場合、3年を経過する日である2026年2月1日の属する年の12月31日まで

つまり2026年12月31日までの売却が適用条件です。

この場合は実質3年と11か月の期間があります。

 

2023年12月25日に転居した場合は、同様に2026年12月31日までの売却が適用条件なので、実質3年と6日の期間となります。

 

「転居した日によって1年近くも適用期間が違うのはおかしい!納得できない!」

と文句を言いたくなるところですが、恐らく税務署の思考としては、

「これ、あくまでも特別控除の『特例』ですから、『特例』に文句言わないでください」

ということだと思います。(笑)

 

住まなくなって「3年以内」ということだけ注意していますと、「解体したら1年以内」という適用条件をうっかり忘れてしまうことがあります。

建物を解体したら1年以内に売買契約を締結することが適用条件です。

当たり前ですが、住まなくなって3年以内の売却・・が前提条件です。

 

あ、「建物を解体して売却するまでの間、もったいないから駐車場として貸しておこう!」

なんてことをしてしまいますと適用除外となりますので併せてご注意を!

 

空き家3000万円特別控除の注意点

こちらも適用要件は国税庁HPの通りですが、私の経験上での注意点を記載します。

 

1.必ず建物も相続し、相続を原因とした所有権移転登記をすること。

適用要件の1つに「売った人が相続(or遺贈)で被相続人居住用家屋および被相続人居住用家屋の敷地を取得したこと」があります。

相続した古い戸建は、多くの場合「土地」にしか価値がないので、例えば相続人が3名だった場合、土地はそれぞれ1/3ずつ所有権を相続して所有権移転登記をするものの、建物はいずれ解体する等の理由で、相続人の誰か1名の名義に相続登記してしまうことがあります。

 

税理士と司法書士がお互いにしっかりとこの空き家3000万円特別控除の適用要件を把握していれば良いのですが、2016年に発足された時限立法でもあるので、当たり前のように「空き家3000万円特別控除を利用する可能性が高い場合は、すべての相続人に建物名義を登記しておくこと!」という常識が、すべての税理士・司法書士に浸透していないかもしれません。

 

2.建物を解体してから売却すること

売買契約締結時に古い建物が存在していたとしても、売買契約書において、「売主は、本件土地上に存する家屋・工作物等の一切を解体撤去し、更地状態にて買主に引き渡すものとする」という条文を設置し、その条文通り、更地の状態で買主に引渡して売買代金を受領すればOKです。

間違っても、「本件土地上に存する建物は、買主がその責任と負担において、本物件引渡後に解体するものとする」などと、買主に建物を解体させるような契約をしてはいけません。

不動産案件に強い税理士に依頼すること!

「居住用3000万円特別控除」も「空き家3000万円特別控除」も、不動産案件に強い税理士に依頼して確定申告してください。

 

比較的簡単に認められそうと思われる「居住用3000万円特別控除」についても、例えば、1つの土地の上に、代々住み続けてきた大きな母屋と、小さなお小売店舗小屋(実例では文房具店)があったりした場合ですが、居住用3000万円特別控除を税務署に納得させるのに本当に苦労した経験があります。

 

実例では、30年以上のお付き合いになる、東京・武蔵野エリアの税理士会の理事までやられた先生にお願いしましたが、そんな先生でも「曽根さん、なかなか大変でしたが何とか3000万円控除使えました」と苦労話を聞かされたほどです。

 

「空き家3000万円特別控除」に至っては、そもそも税理士によっては経験がないこともあり、経験があった場合でも、独自のしっかりとした判断で特別控除を適用できると言い切れる先生は少ないです。

 

実例としては、「本件は空き家3000万円特別控除は使えません!」と自信を持って税理士から言われた案件がありましたが、念のため、私の知る不動産案件に強い2名の税理士に問い合わせたたところ、2名それぞれの税理士から、「大丈夫です、空き家3000万円控除は適用できます!」ということがありました。

結果、最初に「使えない」と言っていた税理士も、色々と再調査してくれたようで、「すみません、使えます」と訂正してくれました。

 

不動産を売却した場合の確定申告を誰に任せばよいのか?というところですが、私などは、「信頼できる不動産業者がいるのであれば、その不動産業者から税理士を紹介してもらうのが良い」と思います。

 

不動産業者は長い経験のなかで、多くの税理士と知り合い、そして結果として、いつしか、不動産案件に強い税理士とだけ付き合うようになります。私もそうです。

不動産案件に強い税理士は、経験豊富な不動産屋さんが知っています。