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3社以上 レインズ登録された物件の印象

複数の会社に売却を依頼する場合は一般媒介

まず基本的なことですが、売主が不動産の売却を複数の不動産会社に依頼する場合、

各不動産会社と締結するのは「一般媒介契約」になります。

※専任媒介契約、専属専任媒介契約は「1社にだけ依頼する場合」の媒介契約です。

 

複数社と一般媒介契約を締結する場合、売却価格などの売却条件は統一した内容で契約します。

一般媒介契約の場合、不動産会社は「レインズ」と呼ばれる「不動産流通標準情報システム」

への物件登録義務はありません。

また、専任媒介契約のような、売主への定期的な営業活動報告をする義務もありません。

 

本ブログでは、そんな基本的なことではなく、全く同じ物件がレインズで3社以上登録されて

いる場合、それを閲覧した同業者(不動産仲介業者)が持つ印象について記載します。

「いや、それ、あなた個人の印象ですよね?」

と言われるかもしれませんが、同じ印象を持つ同業者は多いはずです。

その1 「この物件、良くない物件だろうな・・」

30年超の私の仲介経験において、レインズに3社以上掲載されている物件を見たとき、

まず最初に抱く印象は、「あぁ、これ、あまり良くない物件なんだろうな」です。

 

前述のように一般媒介契約は、レインズ登録の義務はありません。

登録(掲載)義務がないのにレインズに登録(掲載)する意味はどこにあるのか? それは、

「どうぞ(レインズを見ている)貴社の買主に、この物件を是非ご紹介ください!」

という売主側・一般媒介業者の思いが込められているからです。

もっと辛辣に言ってしまえば、

「この物件、弊社に買主はいません。なので、仲介業者の皆さん、どうか買主を付けてください!」

という思いが込められています。

 

売主ご本人は、「複数の業者に競争原理を働かせ、より良い条件の買主を見つけたい!」

と思って多くの会社と一般媒介契約を締結されたのかもしれませんが・・・

例えば、大手仲介業者5社が同じ物件をレインズに登録(掲載)している場合、

「ああ、この物件、沢山の買主を抱えている大手5社にも買主がいない物件なんだな」

という印象を受けます。

 

その2 「売主が誰を信頼しているのかわからない」

3社以上と一般媒介契約を締結している売主も、心の中では「できれば〇〇社で決まって欲しい」

と思っている場合が多いと思います。

「できれば貴方(営業マン)に決めて欲しい!」と思う営業マンが存在するケースもあるでしょう。

そんな気持ちがあったとしても、レインズ掲載を見る買主側・仲介業者にそれは伝わりません。

 

レインズに複数の会社から掲載されている物件を買主に紹介しようと思った仲介業者は、

「はてさて、この物件、どの仲介業者を通して進めるべきか?」

と悩むところからスタートします。

買主側に立つ仲介業者が最初に考えることは、

「このレインズ掲載している会社の中で、売主が最も心を開いている業者はどこだろうか?」

です。

 

それは、この先、様々な売買条件を交渉する状況になった場合、売主との信頼関係が弱い業者を

選んでしまうと、ほぼ同時に他の一般媒介業者経由で別の買主候補が現れ、その売主側担当者の方が

売主との信頼関係が強かった場合、こちら側が不利な状況になるかもしれない・・

買主側の仲介業者は、当然のように、そのようなことまで考えて複数ある売主側の業者から1社を

選定します。

例えば都心の売物件なのに、1社だけ地方の仲介業者がレインズ登録しているような場合、

地方の業者が売主ととても強い関係にあるのだろうな・・などと推測したりします。

 

一般媒介A社を通して物件を内覧した場合、その後、一般媒介B社へ購入申込書を入れることは、

よっぽどの理由が無い限り、業界内ではご法度とされています。

最初に選定したA社の担当者が非常に頼りなかったり、売主との信頼関係が弱い場合など、

買主側仲介業者は本当に悔んだりします。

 

複数の仲介業者と一般媒介契約を締結するのが良くないこととは思いませんが、できれば、

「レインズ登録は、売主が最も信頼できる営業マンの仲介業者だけにする」

とした方が良いと思います。

その3 「売主はどんな人柄なのだろう?」

 

例えば、一人の買主が、A社経由、B社経由、C社経由でほぼ同時に購入意思を売主に

伝えてきた場合、売主はどのような印象を抱くでしょうか?

恐らく売主としては、

「この買主、一番安く買えるよう私と交渉できた仲介業者を通して契約するんだろうな?」

という思いを抱くことでしょう。

売主にとっては「ヤな感じの買主」に映ることでしょう。

 

多数の会社に売却を依頼する売主も、買主側にとっては似た印象を持つかもしれません。

「買主を競争させて、最も高く買う買主を探そうとしているのだろうな」

そう思う買主も存在すると思います。

更には

「この売主は売却を依頼する営業マン(&仲介業者)などは誰(どの会社)でも良く、とにかく

良い条件で買ってくれる買主探しが第一、そんな売主のヤな性格が見え隠れしている」

とまで思う買主や買主側仲介業者もいるかもしれません。

 

「多数の中から最も信頼できる誰かを決めて大事なことを任せられる人」というのは、逆に

「相手からも信頼される人である」ことが多いように思います。

複数会社と一般媒介契約する売主の最大メリットは何?

ここまで、特に3社以上によるレインズ登録(掲載)に対して否定的なことを書いて参りました。

ここで、私が思う「複数会社との一般媒介契約の最大メリット」について書いておきます。

それは、

「仲介業者が両手契約を狙うことにより、やや劣る自社媒介物件を買主に薦める可能性がある」

ということです。

両手契約とは、仲介業者が売主側と買主側の双方の仲介者として双方から仲介手数料を得る契約です。

 

妄想例:仲介業者の営業マンと上司の会話

営業マン「週末に案内する買主さん、物件Xと物件Yを案内する予定です」

上司  「その2物件、どんな物件?」

営業マン「物件Xは買主の希望にピッタリですが他社物件です。物件Yは悪くないのですが駅距離が遠い、でも自社物件です。」

上司  「うむ、できれば両手が取れる物件Yを強く薦めた方が良いな」

営業マン「はい!両手取れる物件Yを強く薦めるつもりです!」

 

買主にとって良いかどうかは別として、複数社と一般媒介契約を締結することにより、

上記の物件Yようなシチュエーションとなる確率は上がります。

 

従いまして、売主が複数社との一般媒介契約締結をお考えの場合は、レインズ登録(掲載)だけは

最も信頼できる1社だけに留めておくことをお勧めします。

レインズ掲載を許可されない仲介業者は悲しむかもしれませんが・・